バス停から
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宿から現場に行く途中にバス停があるんです。
毎朝そのバス停の前を通りかかるんですけど、高校生くらいのかわいい女の子と不器用そうな男の子が段差に腰掛けてバスを待ってるんですよ。海を背景にしちゃったりなんかして。
いいなあって
なんかいいなあって思います。
青春だなあって。
妄想、広がるなあって。
こう、2人は幼馴染なんですよ。
小さい頃から仲がよくて、中学一年生までは一緒に登下校していたんです。
でも、中学二年生になった頃に女の子の方が「もう、一緒に学校行ったりすんのやめよう」とか言い出すんですね。当然男の子の方は「え?なんで?別によくない?」みたいに言うんですけど、女の子は「やだ。恥ずかしい」、「付き合ってると思われたくないし」とか言うんです。
男の子の方はなんだかもやもやした感じで中学校を卒業します。
でね、今はどちらも同じ高校の一年生なんですけど、学校が遠くてバスで通うしかないわけです。家が近所な2人なもんですから当然同じバスに乗るしかない。田舎だから本数も少ないし。で、男の子の方は女の子に嫌われたと思っていて、仲直りしたくて話しかけるんです。不器用ながらも一生懸命。
「お、おはよう。えーと…今日の朝飯なんだった?」
とか
「昨日のロンハー見た?」
とか話しかけるんですけど女の子の方はそっけないそぶりしかしてくれない。携帯いじりながら「パン」とか、「見てない」とか。当然話は続かない。で、男の子は「情けないなー」とか思ってる。「昔みたいには戻れないのかな」っても。
そんで
男の子方が段々「あれ?」ってなるんです。「あれ?なんかマコのことで頭いっぱいだぞ?」って。
そして考えるんです。
「なんで仲直りしたいんだっけ?」って。
「昔みたいに遊びたいから?」
「話しているのが楽しかったから?」
「マコが隣にいるのが自然なような気がするから?」
考えるわけです。
そして結論に達するんです。
「違うだろ」って。
「マコのことが好きだからだろ」って。
「明日、あのバス停で思いを伝えよう」って
で
男の子はいつもより早くバス停に行きます。
女の子はいつもどおりの時間に来ます。
「おはよう」
「おはよう」
「マコ、あのさ」
「はい?」
「えーっと」
「うん」
「そのさ」
「なんかあるの?」
「好き」
「え、なんて?」
「マコ、好きだ」
「え?」
「お前は俺のこと嫌いかもしんない。でも、俺は好きだ」
「なんで?」
「え?人を好きになるのに理由付けなんて必要なの?」
「そうじゃなくて、なんで私がユウスケのこと嫌いとかいう話になってんのって」
「帰るのやめたり、なんとなく冷たかったじゃん」
「確かにそうだね」
「なんか理由あったの?」
「気持ちを大事にしたかった」
「は?なにそれ?」
「ユウスケを好きな気持ちを大事にしたかった」
「うん。さっぱりわかんない」
「はあ?あんた全然気づいてなかったの?」
「なにに?」
「そういうとこバカだよねあんた。クラスのみんな、ひやかしで私たちのことくっつけようとしてたんだよ」
「あー、そうなんだ。田淵とか?」
「うん。田淵くんとか。でね、私、そういう形でユウスケと付き合ったりしたくなかったの。ちっちゃい頃から好きだったから。冷やかしとかなしにちゃんと気持ち伝えて、ちゃんと返事もらって、ちゃんと付き合いたかった」
「じゃあ冷たくしないでそん時言えばよかったじゃん」
「それもそうかもしんないけど、クラスのみんなの思惑通りになっちゃてる気がして嫌だった。それと、ずるいかもしんないけど、あの時あんた恋愛とかまったく興味なかったじゃん。思い伝えても絶対成功しないなって思って。あんたが振り向いてくれるときまで気持ち大事にしておきたいなって」
「そんで、クラスのみんなのほとぼりを冷ますためにああいうことのしたの?」
「うん」
「なんかさ、他に手段あったと思うんだけど」
「一生懸命考えた結果じゃん。」
「あっ、バス、来たね」
「そうだね」
「乗る?」
「乗らない。大丈夫かな?」
「大丈夫だろ」
「そっか」
「でさ、そういう不器用なところもかわいいよな」
「うるさい」
そんなこんなで僕とマコは付き合うことになった。
多分、付き合っていくうえで今回みたいなすれ違いだとか喧嘩だとか僕らの障害になるような事柄がたくさんあるんだろうし、あるけれど。愛して愛されて起こることなんだろうから大丈夫だ。僕はそう思う。思いたい。これからどうなるんだとかはまったくわからないけれど、きっと大丈夫だ。根拠なんてないけれど。
な?お前もそう思うだろ?真夏の太陽さん?
っていう妄想をしています。
はい。病院いってきます。