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変態小説から見えた俺の一面

田山花袋(たやまかたい)の「少女病」という短編に
 
縮緬(ちりめん)のすらりとした膝のあたりから、華奢な藤色の裾、白足袋をつまだてた三枚襲(さんまいがさね)の雪駄、ことに色の白い襟首から、あのムッチリと胸が高くなっているあたりが美しい乳房だと思うと、総身が掻きむしられるような気がする。」
 
という一文があります。
主人公(37歳、既婚で子持ち)は17,18歳くらいの若い女が好きで、気になる女を見かけると家まで付いていったり、バレないように視姦するような趣味があります。
上記の一節は少女を視姦している際の心理描写なんですが「うわ、こいつキモっ」って思ったと同時にドキッとしました。
さすがに家まで付いていったりはしませんが俺にもそういう面があるからです。さすがにここまで生々しく睨めつけるような感じで見たりはしませんが電車の中でキレイな人などを見つけると視界の端などで追ってしまうことがあります。恐らく他の人にも同じようなことをしてしまう人がいるんではないでしょうか。
これは明治時代に書かれたものなので、男の本能的な部分というか無意識的な部分というものはあまり変わるもんじゃないんだろうな思います。
 
また、同じ短編の中に
 
「美しい眼、美しい手、美しい髪、どうして俗悪なこの世の中に、こんなきれいな娘がいるかとすぐ思った。誰の細君になるのだろう、誰の腕に巻かれるのであろうと思うと、たまらなく口惜しく情けなくなってその結婚の日はいつだか知らぬが、その日は呪うべき日だと思った。」
 
という一文もあります。これがたまらなく好きです。名文だと思います。
自分のものでもない、面識すらない少女への男の醜い嫉妬心をこんなに端的に表現出来ている文章は中々ないもんだと思います。
そして、この一節のようなことは誰しも一度はふと心のなかに現れたことのある感情なのではないでしょうか。
ちょっと前に失恋したわけですが、その時の心情を代弁してくれていてすっきりしたのもこの一文が好きな理由でもあります。
 
主人公に、男の持つ変態性やキモさを凝縮させることによって読者の気付かなかった、もしくは気付きたくなかった一面を認識させてくれる良い小説だと思いました。
 
 
ちなみに、主人公はこの少女に見とれすぎて電車のホームに落ちて轢死します。
よそ見をするのは危ないよ、という教訓も盛り込んだ小説になっています。←