「十角館の殺人」を推す
ドラマやアニメやマンガやシネマに「一本取られたな!」って思う作品が誰しも1つはあると思います。
小説での「一本」って、つまらなくてもおもしろくても、とにかく心が揺り動かされるようなことを言うと思うんです。つまり「静」から「動」でも、「動」から「静」でも「一本」になるわけですね。
今回推す「十角館の殺人」は、「静」から「動」への極地の「一本」です。
この作品の「あらすじ」なんて、紹介する意味もありません。
あえて書くとするならば、ある孤島で殺人事件が起きるんですね。
そしてその事件に対して調査をする人も出てきます。
物語が進むに連れてタイトルにある「十角館」についての謎にも迫って来ます。
でも、誰もが犯人には迫れない。
そのまま、ただ淡々と、登場人物たちが犯人に処理されていくだけです。殺されていくだけなんです。
これが「あらすじ」なんですけど、めちゃくちゃつまらなそうじゃないですか?書いてる僕ですら「なんだこのカス小説は」って思いましたから。
でも、ここまでは「静」なんです。
この小説の真髄は「静」から「動」に動く瞬間にあります。
なにが「動」なのか。
犯人明かしの瞬間です。
この作品はここから「動」きだします。
そう
犯人が明かされた瞬間
「絶対に」
と言ってもいいくらいに読者であるあなたはページを遡ります。
今まで苦痛だったページが輝いて見えて来ます。
そしてこの作品はあなたの、そして僕の「一本取られたな!」の一つになるでしょう。